雪が今にも降りそうな夜の高速を、スリップしないようにと注意しながら
鳥取での自主上映会に、監督舞台挨拶として参加するために車で向かった。

中国山脈にさしかかり、霧がかった雄大な山々に満月の光が逆光となったシルエットに見とれ、
BGMでかけていたharuka nakamura(以前いっしょに作品をつくった音楽家)の音楽もあいまって
車を停めて降りてみたくなりながらも
鳥取シネマのレイトショー上映の終了時間目がけて急いで向かった。


主催の女性は、市内でベーグル喫茶『森の生活者』を営む森木さん。
終了30分前に到着し、劇場のホールで出迎えてくれた。


自主上映を映画館を個人で借りてやるというのは、なかなかリスクの高い選択をされたなと思い、
集客面を心配していたこともあって、着いてすぐに、何人ですか?と聞くと
「130人くらい来てますよ」
とさらっと答えて耳を疑った。

同時にいくつもの自主上映や劇場公開などがあるのを言い訳に
ひとつ一つの企画の進行具合を明確に把握出来ていないことを少し反省した。
大変失礼だが、まさかこんなに来ているとは思わなかった。

たとえお客さんが1人でも100人でも、
伝えなければいけないことは同じだが、
どうやって、なぜ、こんなにも多くの人たちが夜遅くに映画館に集まってくれたのか
そればかり気になったし、それについてはまったく見当がつかなかった。
今までは、どうしても出演ミュージシャンなどのゲストにたよっていたからだ。



上映終了後、あたたかい拍手と
主催者からの紹介を受け、スクリーンの前へ。
20代〜40代くらいの若い人が中心で
みんなとてもあたたかい表情で僕の登場を歓迎してくれた。


挨拶後のホールでも、本当にたくさんの人が声をかけてくれて
それぞれの想いや感想をつたえてくれた。
「れいこう堂に行ったことがある」という人はたくさんいたし、
「れいこう堂で音楽を教えてもらった」という人も数人いた。


イベント終了後に、主催者側スタッフとの打ち上げで、
ことの真相を聞いて納得した。

森木さんは、鳥取のローカルヒーロー達をあつめて
この映画の試写をおこない、
それぞれの感想をみんなで出し合い、共有し、
約10名のローカルヒーローチームで、宣伝、集客をおこなった。
1人の渦がたくさんの渦をつくり、その渦がたくさんの人たちを巻き込んだ結果。


このすばらしい出来事と出会いに感謝して
勝手にトットリノキセキと命名させてもらった。


そしてあらためて、
この映画が生み出している新しい渦に、
すこし、たのもしさをおぼえた。



打ち上げ中に、スタッフとして参加した「食堂カルン」の佐々木さんから
一枚の手紙を受け取った。


『映画おめでとう!
 今度観る。
 また何処かで

 haruka nakamura 』






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